以前サティに関する講演用に編曲した,フルートとピアノのための編曲作品,E.サティ《夢見る魚/Le poisson rêveur (The Dreamy Fish) 》の音源を公開しました。
この音源は講演のときの演奏ではなく,全部私が一人で演奏して多重録音した言わばデモ版です。
この作品は,サティの自筆譜としてはピアノ譜の下書きが存在するだけで,生前は未出版,未発表でした。
元々サティの友人が書いた物語に沿った舞台音楽が想定されていたところ,その企画が頓挫してしまったからです。
そして,サティの死後,サティ研究者のロベール・カビーがピアノ独奏版として創造的な楽譜変更も含めて完成された作品として世に出しました。
そのあと,加筆変更が多いカビー版を改めるように,高橋アキ版とロバート・オーリッジ版(いずれもピアノ独奏版)が散発的に発表されました。
《夢見る魚》は元々オーケストラの編成を予定していたようで,残っている自筆譜はオーケストレーションのための「ピアノリダクション」の様相を呈しています。
上記3版は,ピアノソロ作品として成立させるための工夫を検討した結果です。
私の場合は,もう一つ何かの楽器と組み合わせれば,自筆譜に書かれていた音響の整理ができるのではないかと思い,上記の3版の楽譜を参照した上で,ピアノとフルートのために編曲しました(カビーの創造性に倣う部分もあったし,自分の創造性もあり,トランスクリプションとは言えないでしょう)。
この音楽はとても大衆性があり,どうして有名にならないのか,みんな演奏しないのか,不思議なくらいです。
因みに,ロベール・カビーは持ち前の創造性を生かしてオーケストラ編曲版(サティが夢見た編成!)も残しており,それもまた捨てがたい魅力があります。
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